彦根文化遺産

彦根足軽屋敷の街並

茶の湯

和菓子

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「茶の湯」の伝統

彦根には、千家など町衆の茶の湯とは異なる、大名茶の系譜を引く茶の湯文化が今日まで息づいている。石州流一会派という井伊直弼が創設した茶の湯の道統を継ぐ団体が健在であり、市内各所で茶会が催されている。石州流は、近年、全国の城下町にある石州流各派が連合して全国組織ができ、彦根でも大会が催されて活況を呈した。

彦根藩では、伝来する茶道具や記録から歴代の藩主が茶の湯を嗜んだことが知られる。13代藩主井伊直弼は茶の湯にも精進した藩主であった。31歳の若さで武家茶道石州流の一派創立を宣言し、弟子を抱えた。特別史跡内にある埋木舎(うもれぎのや)には、直弼が茶の湯に励んだ澍露軒(じゅろけん)という茶室が公開され、し ばしば茶会が催されている。名勝玄宮園の鳳翔台や臨池閣などは直弼が幕府の数奇屋坊主をもてなした記録の残る歴史的建造物である。鳳翔台では、今も呈茶のもてなしを受けながら、大名茶の世界を満喫できる。また、市内には城内や城下の直弼ゆかりの箇所で茶会が催され、多くの招客で賑わっている。

玄宮園での茶会

玄宮園での茶会

彦根城博物館の小学生を対象とした普及事業「はくぶつかんへ行こう」では、展示室で直弼ゆかりの茶道具を見学し、直弼ゆかりの茶室「天光室」で実際に茶の湯を体験する。「天光室」に茶道具をしつらえ、客として露地から入ってきた子どもたちは、狭い茶室で伝統的な「もてなしの文化」を学ぶ。また、奥向きの「御座之御間」では、お茶の先生のお点前を拝見した後、自ら茶を点てる。子どもたちにとって、「ほんものとの出会い」は貴重な体験であり、彦根の伝統文化を継承できる場となっている。

茶の湯文化は和菓子の文化ともつながっている。彦根には、今も和菓子店が多く店を構えている。創業が江戸期にさかのぼる店も健在である。江戸時代後期に、和菓子店「糸屋重兵衛」で作られていた餅菓子である「益寿糖(えきじゅとう)」は、城下で人気があり、城にもしばしば納めていた。近年、この益寿糖が資料に基づいて復原され、博物館の茶席に出されて好評であった。そのほか「埋もれ木」や「柳のしずく」など井伊直弼にゆかりの名をつけたものや「三十五万石」のように彦根藩の石高を名づけたものなど、茶菓子としての個性を競っている。名古屋から伝わった外郎(ういろう)が、「彦根ういろ」と名を変えて今日でも味わうことができる。