時報鐘
「時報鐘」の音風景
彦根城に登城する途中、本丸下の太鼓丸から毎日決まった時間に鐘の音が聞こえる。江戸時代から絶えることなく、朝から3時間おきに、6時、9時、12時、15時および18時の1日に5回、城下に鳴り響く鐘の音は、「お山の鐘」として市民に親しまれている彦根城の時報鐘である。環境庁の「日本の音風景百選」にも選定されている。
築城当初は、鐘の丸に設置され、城下に時を知らせていたようだが、より遠くまで音色が届くように太鼓門近くの高台に移されたと伝える。江戸時代の絵図には「鐘突所」と記されている。現在の鐘は愛知郡長村(東近江市長町)の鋳大工黄見新左衛門ら5人により制作されたもので、弘化元年(1844)に12代藩主井伊直亮が発注したものと伝えている。城下の人々はシンボルとして天守を仰ぎ、時報鐘で時を知り、日々の生活を営んできたのである。この「時の鐘」は、音風景として彦根独自の歴史的風致を 形成している。